職場の業務改善のすすめ 第2回 「成功のための5つのルール」

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管理人

加藤雅久(かとう・がく)

名古屋生まれ(仙台在住)

業務改善・コミュニケーション向上エキスパート

早稲田大学政経学部(政治)卒

MBA(戦略的経営専攻)

英検1級

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1.小さく始めて、大きく育てる

業務改善をあまり大規模に始めないで、小さいところから、職場のチームから始めて成功体験を積み重ねましょう。

全社プロジェクト、事業(本)部単位で行うのは、投資効果のスケールメリットを得るためだと思います。コンサルタントを雇い、ITシステムを導入するとなると、投資額も相当なものとなりますから、それに見合うだけの効果、生産性向上、コスト削減をカバーしようとして、より広い範囲で、同じ作業をしている部門を対象とすれば、それに対する同じ解決策を提供すれば、規模の経済の法則で、単位当たりのコストも小さくなります。

しかしながら、こういう進め方の問題は、対象となる人々の時間、労力を全体として使うことになるので、実際に新たな費用が発生するわけではないもの、その人たちが本来の業務で使うべき時間をプロジェクトに取られるという意味で、機会損失のコストを支払うことになりますから、実際にはかなりの経済的ロスがでることになります。

また、数多くの母集団からの情報を集めますから、集めたデータのばらつきを平均値でまとめようとすると、全体として目標とすべき業務のパフォーマンスがあまりあがらないおそれがあります。中間くらいの多くの人々は、今のやり方に安心し、また、ハイパフォーマーのモチベーションが下がってしまうことになりかねません。

管理職クラスの人が、チームメンバーのパフォーマンスを向上させるという意識をもって、業務改善をリードして、少しずつでも成果を上げていき、その経験を積み重ねた段階で、そのノウハウ、スキルを他のチーム、部門にも広げていく、あるいは、成功体験についてのナレッジをシェアしていくことが、業務改善が単発プロジェクトで終わらず、会社の変化のためのDNAとして定着するためにどうしても必要なことです。

2. 直感を信じよう

業務改善がプロジェクトになると、関係部門で、業務を洗い直しするために、大規模な調査が行われることが多いです。

業務を棚卸し、リストアップし、業務を分類し業務量調査を行い、各業務の時間を計測し、業務のフローを書き、仕事の分担状況、個人別の仕事時間の算出する。。。

全体の母集団の数も多ければ、集計も大変ですし、第一、全体から導かれた業務と業務時間の配分からどういう課題が設定できるのか大変疑問です。平均的は業務時間を計算で出したとして、それを基準にして業務を改善することが本当に良いことだとは思えません。また、業務フローを外部の目で検討したとして、本当に最適なフローが作成できるのかと言えばそれも疑問です。

ですから、むやみやたらに調査、アンケートをして、毎日の業務を洗い出すのではなく、こういうところが問題ではないかという「直感」を大切にして、仮説をたててから、業務改善に取り組みましょう。

私も、電機メーカーの大企業製造向けシステム営業をしていた時に、業務分析のために、毎日の業務を時間毎に記録につけるという作業を1ヶ月間続けたことがあります。調査チームが結果を集計した結果、営業の外勤時間(外出時間)の割合が、労働時間の20数パーセントだったことがわかったというのが、調査結果でした。こんな程度の発見をしたいなら、50人もいる営業マンに毎日記録をつけさせなくても、別の方法で調べることは可能ですよね。

また、実効性のあるものを解決策として実行できるかどうかについても、あらかじめ、検討をつけておかないと、調査がムダになります。さきほどの例でいうと、営業の外勤時間(の割合)が、少ない→だからそれを増やすための方策を考えるとなってのでしょう。具体的には、(1)営業マンは意識的にもっと顧客に会う努力をする、(2)技術部門が、営業が顧客に行くための営業ツール(新製品の説明資料など)を新規に作成する、(3)営業部内の管理チームが営業の事務処理=向上への発注業務など=をこれまで以上にサポートする、という方策が決まりました。営業マンの外勤比率の増加が、契約率のアップに結びつくという仮説?になり、その結果、営業マン、営業部門の管理チーム、営業部でない他の部門である技術部門、すべてにおいて業務時間が増えることになりました。

営業マンは、昼間の時間帯に本社の机に座っていると文句を言われるので、外出しますから、事務処理は夕方、帰社してから行うことが多くなりました。管理チームは、従来、営業マンが自分で記入していた事務書類を「押し付けられ」、技術部門は、これまでなかった資料の制作に追われます。笑えない悲劇ですね。でもこれば本社の経営企画室でマネジャーをしていた方が、営業部門に来て実際に行った業務改革だったのです。

方法論それ自体が間違っていたとは思いませんが、業務改善は、実行して生産性が上がる、コストが下がるなどの結果が出てはじめて完結するものです。実行段階までを見通した、直感力がなにより大切です。

3. ITシステムは、万能薬ではない

業務を自動化、システム化にして、業務を効率化したい、と多くの人が思います。システム開発が伴う業務改善には、多くの投資費用、それに関わる人の時間、労力がかかります。その投資に見合う投資効果、付加価値が本当に生み出せるものかどうか、事前に慎重に検討しましょう。

要求部門からすれば、システム導入が、職場の問題の唯一の解決策だと認めてもらえば、あとはシステム部門、あるいは、システムの出来次第となります。

失敗例をひとつあげましょう。筆者が、大手電機メーカーの営業部門に在籍していた時、「顧客情報管理システム」が、本社の全事業(本)部に導入されたことがあります。これは、製品が、オフィス用コンピュータシステム、生産設備の制御システム、ビルの昇降機、照明設備、空調など多岐にわたるために、顧客1社のために、本社の多くの営業部門が関わっており、その顧客キーマン(購入の意思決定関係者)情報を共有するためのシステムでした。

結果は、どうだったでしょうか?そうです。ご想像の通り、このシステムは、活用もされず、また、営業担当が情報のアップデートも新規追加もしなくなり、いつの間にか、使われなくなってしまいました。

4. 業務改善を、業務評価・ボーナス査定に使わない

業務改善で行う活動は、業務を改善し、チームの生産性を上げるためのフィードバックであっても、ボーナス、昇進のための査定であってはなりません。より積極的な意味では、今の業務を効率的に早く済ませて、残りの余剰時間を創造性に使ってもらうためにあります。

業務改善が始まると、仕事のできる人は、普段と何も変わらず、その調査に関わる業務(日報報告、業務時間)も軽々とこなして併記な顔をしていますが、多くの人は、自分の仕事を今まで以上に監視され、業績評価に影響がでるのではないか、仕事のやり方を否定されたり、また、非効率だと叱責されたり、場合によっては、今のポストが不向きで職場を変わることになるかもなどと考えるかもしれません。

ホワイトカラーの職場では、仕事の出来不出来は、その人のもって生まれた能力だと考えている人も多く、OJTで教えられるのは、「知識」だけで、スキル、能力は個人の資質だから変えようがないという考えです。ですから、最低限、失敗しないような「やり方」をチェックはしますが、それを早く完成(完了)させることに重点をおいていないようにみえます。時間がいくらかかっても、正確に、もれなく、間違いなく仕事をすれば、良いのであって、手際良く、ぱぱっとできるのは、「要領が良い」『頭の回転が早い」特別な人というわけです。

業務効率を上げるということに、もう少し多くの人が関心を持つようにならないといけません。そして、業務のやり方について、仕事のできる人が、良くない点をフィードバックして上げること、そしてそれによって能力は向上する、そしてそれは、本人にとっては成長するということだという認識が一般に広がると、働く方は変わってくると思います。

また、日常的に、業務改善を行い、生産性を上げるような職場にするには、やはりカルチャーというか、DNAというのが必要になります。

5. 抵抗勢力と向き合う、または、価値観を共有すること

あなたが、たとえば7人の部下を持つ課長レベルの管理職ならば、彼らがなんと言おうと、業務改善を進めようと思えば、進められるでしょう。しかし、5人の課長とそのチームを管理する部長レベルの管理職ならば、そんなにすんなりはいかないかもしれません。

私も、外資系企業で、本部の企画部長として、3つの事業会社の既存のインターネットビジネス戦略を統括することになり、全社的なビジネス戦略の立案、また、顧客サービスのインターネット化をビジネスとして実行する提案をした際には、相当は抵抗を受けました。

抵抗には、無言に抵抗、正当なな批判、へ理屈による抵抗、面談拒否、反対・追い落とし運動展開といったレベルがありますが、私の場合には、「保険業界での勤務経験が今までなかったヤツに、いったい何がわかる?(自分は、20年以上この業界にいる)」という拒否反応と、「もし計画が実行されたら、自分たちの仕事はどう変わってしまうのだろう」という不安の両方入り交じった複雑な感情でした。

私は、関係部門の責任者と、何度も話し合い、時には、仕事の悩みを聞き、食事をして、信頼関係を築くようにしました。やろうとしている計画についても、正直に話をしましたし、内容については、彼らの意見を聞いて良いと思うことは取り入れて、最終案をまとめました。この仕事の教訓は、いくらトップダウン式経営の外資系といえども、業務についての改革のような話においては、事業部門の人たちは、簡単にはいそうですかと従ってくれないということです。

特に、売上げをもっている事業部、営業部門は、営業の数字での評価が1番ですから、プロセスである仕事の仕方について改善、改革しようとしてもそんなに簡単には応じてくれません。

いずれにしても、業務改善をするというのは、業務をする人の深層、こころの部分に触れるデリケートなイシューであるということです。業務という表層的な部分だけで、問題解決をしようとしても、抵抗という形で、自分の能力、やり方に対する愛着、プライドといったものや、変化に対する本能的は防御反応など、人間が人間である以上、どうしても無視できないファクターを決して過小評価してはいけません。いや、むしろ、こちらのココロの問題こそが、業務改善の核心といっても過言ではありません。

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