良いスピーチとは?〜7つの秘訣

コミュニケーション向上

良いスピーチとは何か

どういうスピーチが良いかは、一般的には言えないですね。

内容を相手により良く伝えるという観点で考えると、いくつかの基準が考えられれます。

ここでは、米国の教育NPO団体「トーストマスターズ」が、昨年導入した新しい教育プログラム「Pathways Learning Experience」のスピーチの論評ガイドにある項目を参考にみていきましょう。

言語の明瞭さ

話し言葉が明瞭で、相手が聞きやすいということは、伝える際には一番重要ですね。

日本語は、英語と発声法が異なり、口の中で音声が「こもる」ので、できるだけ明瞭に話すように心がけましょう。また、同じく、発声法が腹式ではなく、胸式呼吸であるために、息がだんだん続かなくなり、次第に語尾に声が小さくなる傾向にあります。私も気を抜くと、語尾がはっきりしないと注意されます。

言語を明瞭(クリア)に話すだけで、聞く側の負担が大幅に減り、話を聞いてもらいやすくなること請け合いです。

声のバラエティ

声のバラエティとは、声のトーン(口調)、話す速度、そして声の大きさなどのことです。

これらを意図的にコントロールして話すとスピーチに変化が生まれ、聞く人も話に飽きず、関心を持って聞いてくれるようになります。

まず、声のトーンですが、これには、3つの種類があります。

声のトーン

一つ目は、格式張った、正式な場での話し方とカジュアルな場での少しくだけた話し方です。例えば、前者だと、結婚披露宴での仲人さんの新郎新婦紹介、卒業式での送辞、答辞のような場で、少しフォーマルな感じの口調が期待されます。反対に、後者だと、結婚式の二次会、仲間内のパーティなどの場で、インフォーマルで、友達同士の日常会話のような口調が期待されます。

二つ目は、テンションが高いというか、エネルギッシュかどうかです。明るく元気に話す人もいますが、暗く深刻なトーンで話す人もいます。どちらが良いかはケースバイケースですが、大抵は、明るく元気に話す方が、聴衆には良い印象を与えます。一方、告別式、お別れの会のような場面では、厳粛な感じで話をする方が良い場合もあるでしょう。

三つ目は、声の高低です。

一般的には、女性の声は高くて聞きやすい、男性の声は低いので聞き取りにくいと言われています。これは、やはり、日本人の胸式呼吸が関係していて、低い声だと口の中で音がこもってしまうために、聞きづらくなるようです。低い声の方が、信頼感が増すという話もよく聞きますが、声は高くした方が、相手に聞きやすくなることは知っておいたほうが良いでしょう。

話す速度

話すスピードが早すぎると、聴く人はついていくのが大変で、最後には聴くことを諦めてしまいます。相手が理解できるような速度で話しましょう。早口はいけません。立て板に水では、相手の頭には何も残りません。ちなみに、NHKアナウンサーのニュースを読む早さは、1分間に300文字だそうです。

普通に友人などとおしゃべりをしている時と同じようなスピードで話せば、人前でのスピーチでは早すぎるでしょう。私は、通常でも早口だと言われるので、人前で話すときは、意識してゆっくり話すように心がけています。

話を聞くときには、文章を読むのと異なり、文字を頼りにできませんし、先読みもできませんから、類推ができません。また、読むスピードは自分の理解度で早くも遅くも、2度よみもできますが、聞くときは、話し手の勝手なスピードで、また、同じところを2度話してもくれません。

アメリカ合衆国の大統領は、みんな比較的ゆっくりした話し方をしますよね。

これは、多くの人に、メッセージを伝えるという強い意志の表れかもしれません。

声の大きさ

言語の明瞭さと同じくらい、聞く人にとって重要なのは、声の大きさです。

このことは、声のトーンでも述べましたが、日本語の発声と関係しており、口の中で音がこもるために、大きな声を出すことを意識しないと、相手に届きません。

もし、マイクロフォン(マイク)があれば、躊躇なく使いましょう。拡声装置があれば、少なくとも声が相手に届かないという事態は避けられます。

声の大きさに自信のある人が、「私は声が大きいのでマイクは使いません」と宣言して、声を張って話すのを散見しますが、大抵の場合、そういう聞き手にとっては、聞き取りにくいですし、時間が長くなると声もだんだんでなくなります。また、話すトーンが一本調子になりますから、話も単調な感じになります。正しい発声法の心得がなければ、マイクを使った方が賢明でしょう。

どうでしょう。今回は、良いスピーチのための7つの秘訣のうち、言語の明瞭さと声のバラエティについて述べました。

非言語コミュニケーション

有名なメラビアンの法則とは、非言語的コミュニケーションの重要性を説いたもので、コミュニケーションにおいて、人に影響を与える情報の割合は以下の通りです。

  • 言語情報(話の内容など):7%
  • 聴覚情報(声のトーンや話の早さなど):38%
  • 視覚情報(見た目など):55%

このことを「伝え方」の視点が捉えると、話すメッセージと話し方によって人に影響を与えらるのは、45%で、視覚情報=非言語コミュニケーションでは55%となります。

つまり、言語情報(話の内容)よりも、聴覚情報や視覚情報のほうが影響を与えやすいということです。

ジェスチャー

ジェスチャーは、ボディ・ランゲージの中心を占めるものです。

通常のジェスチャーに加えて、顔の表情を含めて、ボディーランゲージを考えます。

顔の表情

さて、メラビアンの法則というのがありましたね。

  • 言語情報(話の内容など):7%
  • 聴覚情報(声のトーンや話の早さなど):38%
  • 視覚情報(見た目など):55%

メラビアンの法則では、伝えるメッセージと視覚情報の一致が重要だということでしたが、視覚情報中では、顔の表情が大きな割合を占めます。

なぜなら、話し手は、その表情によって、無意識に、聞き手に反応したり感じたりするきっかけを与えているからです。

ですから、あなたが伝えたい内容、感情と顔の表情を一致させなければならないということに留意してください。そうしないと、聴衆は混乱します。

例えば、あなたが、大切な人を失った経験(言語情報)を、暗いトーンで、ゆっくりしたペースで(聴覚情報)、悲しい表情を浮かべて(視覚情報)話す時、聞き手に最大のインパクトを与えるのです。

ジェスチャー

通常、上半身を使った動き、特に手を使った、ハンドジェスチャーが重要だと言われていますが、ここでも、スピーチの効果を高めるという観点よりも、メラビアンの法則でいう、視覚情報という観点で見てみましょう。

例えば、あなたが苦労して練習した結果、市民マラソン大会で完走した瞬間の気持ちを伝えたいとします。

  • 言語情報(話の内容など):「やったぞー、ついにやったぞー』
  • 聴覚情報(声のトーンや話の早さなど):叫ぶような大きな声で

では、視覚情報として、ジェスチャーをするなら、どうしますか?

  • 視覚情報(見た目など):嬉しさでいっぱいという表情で、顔は天を仰ぎ、拳(こぶし)を握りしめて、両手をあげるポーズで

これなら聴衆はあなたの伝えたい感動体験を共有できるのではないでしょうか。

もし、この部分を、ジェスチャーなしで、「ゴールした瞬間に、私はこれまでの苦労を思い出し、『やったぞー、ついにやったぞー』と叫んだのです」と言語、聴覚情報だけだった場合とを想像してみれば、違いは明らかでしょう。

 

もう一つ、ジェスチャーの効用をあげましょう。

ジェスチャーをスピーチに使うと、スピーチがエネルギッシュになります。

スピーチには、自信(があるように見えること)が一番重要ですが、人を感動させる、人を動かすためには、情熱(パッション)が必要です。

そしてスピーチで、情熱を表現するのには、聴覚情報(声のトーンや話の早さなど)と視覚情報(見た目など)を考慮しなくてはなりませんが、ジェスチャーは視覚情報を強化するために重要なのです。

アイコンタクト

相手の目を見る、視線を合わせるというのがアイコンタクトです。

あなたが話すときに相手の目を見ることで、相手は、あなたを信頼できる、あるいはフレンドリーな、正直な人だと思います。これは、日本でも、欧米でも同じでしょう。ですから、アイコンタクトは、話を聞いてもらう際には、重要な要素になります。

でも、相手と面と向かって目を合わせるのを苦手にする人が多いと思います。

私も正直言って、苦手なほうです。ですから、意図的にアイコンタクトを取るようにつとめています。

最初に、笑顔で、相手と目を合わせる。これで心が通じます。

また、大勢の人前で話すときに、機械的に、会場全体を見渡したり、左右に首を振ってアイコンタクトするのは避けたほうが良いでしょう。

なるべく自然に、いろんな場所に視線を送りましょう。後ろの聴衆を見て話したら、今度は前の聴衆を見て話したり、あまり特定に人に長いアイコンタクトしないように注意します。

もちろん、少人数の聴衆の場合には、一人一人に順番にアイコンタクトをおくれば良いので、1対1の時に近い感覚で行えば結構です。

聞き手の立場から考えると、こちらの目を見て話してくれる人の話は信頼できるから、話を聞こうというマインドセットになりますから、話し手からすれば、話を聞いてもらうためには、アイコンタクトがいかに重要であるか、お分かりでしょう。

 

<参考>

以下、非言語コミュニケーションのボディーランゲージに関して上記で取り上げなかった、「立った姿勢」、「動き」について補足します。

立った姿勢

両足に均等に重心をかけて、まっすぐに立つ姿勢が基本です。

話し始めと話の終わりにはこの姿勢を取りましょう。あなたが自信を持っていること、そしてリラックスしていい感じでいることが相手に伝わります。

背中を丸めて、うつむき加減で立っていれば、聴衆はあなたが自信がなくて、恥ずかしがり屋だと感じます。そしてそういう人の話を真剣に聞こうとは思いません。

動き

同じ場所に立ったままで話すスタイルの講演会が多いですね。

全然動かないで話をされると、聞いている方も、刺激が少なくなり、退屈して、集中できなくなります。

あなたが、ある場所から別の場所に歩くことで、聴衆の関心を引きつけます。視線や頭をあなたに向けさせることで、より聴衆をあなたが一体感を持つからです。

重要だと思うポイントを話すときには、前に一歩踏み出してみるとか、トピックを変えるときには、横切った方向に場所を変えて話始めるとかして、変化を生み出すと効果的です。

なお、あなたが話す際に紹介されると思いますが、その時にも、立ち居振る舞いには気を配りましょう。

あくまで、自信ありげに振る舞うことを念頭にして、顔を上げて、背筋を伸ばして座ります。

そわそわしたり、足をブラブラしたりして、落ち着きのない態度を示すと、聴衆にも伝染します。

米国の研究で、態度がその人の感情をコントールできるというものがあります。自信のある態度が落ち着きをもたらします!そわそわすると、余計に自信がなくなるということです。

聴衆の関心・ニーズの把握

これは、聞き手が、話し手であるあなたについてきているかどうかということです。

あなたが、聴衆を惹きつけることに成功し、聴衆のニーズに気づいていれば、会場は一体感に包まれることでしょう。

反対に、聞き手が退屈していたり、スマホをいじり始めたり、居眠り、雑談する人がいたら、あなたの話は、聴衆の関心、ニーズを満たしていないことになります。

関心を惹きつけるコツ

聴衆が関心を失ってします理由は、たくさんあり得ます。

一番は、話の内容がつまらない、あるいは、期待した内容と違う時です。

これは、事前に、聴衆が誰で、何を期待しているかを確認した上で、話す内容を考えるか、あるいは、自分のスピーチ内容を明確にして、その内容に関心のある聴衆にきてもらうしかありません。

ここでは、スピーチの内容と聴衆の関心、ニーズが異なっているわけではないが、話し手のテクニックとして、関心を惹きつけるコツを紹介します。

1.話の冒頭のつかみ

スピーチの冒頭で、米国では、ジョークで聴衆を和ませるというのが普通ですが、日本でも、いわゆる「つかみ」(落語だと、まくら)というのがあります。

つかみには、質問から始める(「皆さんは、◯◯という言葉を聞いたことがありますか?」)、あるいは、話す内容と関係のあるもので、インパクトのある事実を述べる(「地上に降り注ぐわずか1時間の太陽エネルギーは、人類の一年間の消費エネルギーに匹敵する量です」)という方法があります。

2.視線をおくる(アイコンタクト)

アイコンタクトについては、前回述べましたが、聴衆の関心を惹きつけるには有効です。

1対1で話している時のように、視線を聞き手である相手に向けることで、聴衆はあなたに関心を向けるのです。聴衆があなたに1対1で話しかけられているという感覚を覚えるようになるからです。

3.原稿を読まない

話をするのではなく、原稿を読んでいると、臨場感が失われてしまい、聴衆は退屈してしまいます。

できれば、原稿なしで話をしたほうが良いですが、難しければ、

要点をカードか、1枚の紙にまとめて、演台に置いてチラ見する程度にしましょう。

4.聴衆と対話をする

スピーチは、話し手が、一方的に聞き手にメッセージを伝えるものと考えると、うまく行きません。スピーチもコミュニケーションの一つです。そしてコミュニケーションは対話です。

スピーチの中でも、聴衆と対話する場面を入れると、関心も高まりますし、ライブ感も出ますし、会場との一体感も生まれます。

質問をするというのが一般的です。

「人間の臓器はいくつあるか知ってますか?」と聞いて、いくつか回答をもらった後に、「約30あります」という風に繋げる方法もありますし、「こんなことが起きたらパニックになりますよね」と質問というか、同意を得るというようなやり方もあります。

コンサートでもcall and responseという、アーティストと観客とが対話するパフォーマンスがありますね。聴衆の参加意識を高めることで、自分たちに関心を惹きつけているのでしょう。

興味深い内容と構成

興味深い話

興味深い話かどうかは、もちろん、聴衆が決めることです。

聴衆が前もって、どういう期待を持って、どういう心構えで来たのか?なぜ、この場所に話を聞きに来たのか?という前提が問題ですね。

明治大学教授の斎藤孝さんは、講演会やワークショップで、自分の話す内容は素晴らしいのでと断ってから、「(わたしの話の)どこで泣くかは、皆さんの感性の問題です」「どこで笑うかは、皆さんの知性の問題です」と言うそうです。

つまり、話し手には、聞き手、聴衆のことは、コントールできない部分が必ずあると言うことです。

ですから、できるだけ聴衆に配慮して準備したら、あとは運を天に任せると言う、人事を尽くして天命を待つという開き直りが必要だと思います。

あとは、どんなトピックでも、なるべく、面白い話にするという努力は必要だと思います。

分かりやすい構成

スピーチの構成というと、序論(イントロ)ー本題(ボディ)ー結論という基本構成が一般的です。

しかし、スピーチの中心になる、本題(ボディ)にも、構成が必要です。

構成には、例えば、「時系列」型、「主張ー理由ー証拠(PREP)」型、「比較」型があります。

「時系列」型では、時間の経過に従って情報を配置します。時間や過程の流れに従って情報を提供する最もシンプルな方法と言えます。「まず」「次に」「それから」「最後に」などの接続語で、流れを明確にします。

「主張ー理由ー証拠(PREP)」型では、意見を述べてから、その理由と例をあげます。これは意見を述べる時に使われる方法です。英語では、意見には理由を述べる習慣がありますが、日本語では、しばしば省略されるので、意識して理由を述べて、あなたの意見を説得力のあるものにしましょう。

「比較」型では、2つ以上の事例について、類似点と相似点を情報として配置します。

上記以外にも以下の構成法があります。

  • 「空間」型:地理的要素によって情報を配置する。
  • 「問題解決」型:問題と解決法に分けて情報を配置する。
  • 「原因ー結果」型:ある状況について、原因を述べ、次にその結果について述べる。
  • 「トピック」型:ある問題について、カテゴリーに分けて情報を配置する。

これらは、どれが良いとか悪いとかはなく、状況、内容、目的に応じて、あなた自身が選択すれば良い。また、いづれの方法を選択したとしても、伝えたい情報が組織化され流ので、聴衆は理解しやすい。

話を聞くのは、文章を読むのと違って、目次もないし、先読みもできないので、フォローするのが読むより大変な負担がかかります。

お互いが共有する構成の方法(型)で話すことで、あなたの話を聴衆がフォローしやすくなり、伝わりやすくなるのです。